A君の命日がやってくる。

3週間ちょっとの長い海外出張から帰ってきたのが先週の日曜日の3月3日(日曜日)のひな祭りの日。

仙台近郊の名取市が自宅なので成田空港経由の海外はいつも行きと帰りの国内移動だけで疲れてしまう。JFKからの帰国便が到着した後も、入国審査はむろん、荷物チェックもほぼ素通りでスムーズに日本国法的にも無事に帰国し、いろいろと詰め込んだずしりと重いPCモニターのダンボール一箱をクロネコさんで職場発送として身軽になり、いつもの上野駅への京成スカイライナーに乗って「あれ？地下線路が長くなったんじゃね？早いねぇー！！」と感心しながらも、やはり上野から仙台への新幹線の移動を考えると気が重くなった。

成田空港駅入り口前ですでに新幹線チケットも買っていて、京成上野到着後に新幹線乗車まで40分ほどの時間があることがわかっていた自分は、京成上野を出て早足にアメ横入り口を右手に見ながら「久しぶりなぁ～、にっぽん」と感じ入りながらJR上野駅の駅ビルに突入、場所がわかっていた本屋さんに突進しサイクルスポーツをいそいそと購入、さてさて、「ラーメン食べたくなったなぁ～」と改札を抜けた。

JR上野駅では比較的頻繁にラーメン屋さん「粋家」を使っている。恐らく、ほぼ間違いなくスイカと読むと思うのだが、これってJR系列のラーメン屋さん？？

いずれ、大丈夫かなぁ～、新幹線に遅れないかなぁ～、と思いながら、今度は「粋家」に突入し、女の子の店員さんに半分もう腰掛けながら早口で「30分以内、間に合う？」と聞くと店員さんは客席と厨房をさっと見回して「大丈夫だと思いますよ！！」と一言。この店員さんに絶大な信頼を寄せた自分は椅子に今度はどかっと座り、そのあと程なくして供された粋家ラーメンを堪能、そして今度はコンビニNewsでオニギリ2個、500mlビール1缶、ピーナツ小袋1つを買い込み、新幹線ホームに立った時に、「おぉー！！ Japan is Number One!!」と思ったのですよ。結局、粋家の粋家ラーメンが今出張で一番美味しく感じた食事だった。

さてさて、帰国後の月曜日から金曜日までを終えて、明日からの週末はゆっくりと楽しもう、という気分になりたいところだが、正直とても心が重い。

実は帰国日の3日の日曜日、夜8時少し過ぎには自宅到着した自分は、荷物もあらかた整理したあと、コタツに入ってテレビをつけたが、その時に流れ始めたのがNHKの震災時のビックデータに関する番組だった。

ビックデータそのものは別とし、自分がショックを受けたのは、携帯電話の位置情報のデータがビックデータとしてあること、個人を特定することは出来ないが、震災前後の人々の動き(位置情報を発する携帯電話を持つ人の分のみだが)がすべて記録に残っていることであり、さらにその番組では、自分の友人が亡くなった名取市閖上地区の震災前後の人の動きを一例として見せてくれたことである。

高校の親友の中でも仲間の面倒見の良いO君が、震災で亡くなったA君の墓参りをしようと皆にまた声掛けしてくれた。今回の出張に出る直前か出た後に連絡をもらった自分は「いつもO君ありがとう。あぁ～、また3.11が来るなぁ～…」程度の思いだったが、前述の番組を見て悲しみを新たにし、その思いがずっとこの1週間続き、あと数日で3.11が迫る今、ほっとするという心持ちになることは出来ないでいる。

いつも思うことだが、親友を亡くしたとはいえ、身内を一人も今般の震災でなくしていない自分でさえこうである。ご家族をなくされた方々の悲しみはいかほどであろうかと。

実は、今更だが、自分もこの震災によって軽いトラウマみたいなものを生じているように思う。そして、それは多くの人の死をあまりにも身近に感じてしまったためであると思う。

棺が所狭しと置かれた旧空港ボールでせねばならなかったA君との悲しみの再会。火葬場の処理能力問題により名取市内の葬祭式場に移送され、パイプ椅子の上に所狭しと並べられた多くの棺の一つに横たわるA君。ようやくと火葬が山形市内で行われることとなり、次々と執り行われる火葬の中で葬られたA君。遺体との対面など指折るほどの経験しかなかった自分が、突然に、そして異常なほど多くの遺体の近くに放り出されたわけである。特に、旧空港ボールのレーン上に所狭しと大小の棺が並べられ、方々でそれらにすがって泣きじゃくる多くの人を目にした記憶は、恐らく死ぬまで消えることはないと思う。次々と自衛官の人達によって運び込まれてくる棺の列、微かに漂う死臭のようなもの。外にはその棺を山のように積んだ自衛隊トラックが横付けされている。A君の突然の死はむろんこと、すべてが異常であり、悪夢のようではあるが現実の記憶。

これがトラウマだとすれば、恐らく時間しかそれを癒すことは出来ないのであろうと思う。

…と言うことで、今週末は帰国後最初の週末だが静かに過ごそうと思う。日曜日にはO君の声掛けで友人らとA君のお墓参りだ。近況報告でもして来よう。

以上、

2013年3月8日(金曜日)

午後10時　自宅にて